鬼の面

前にも書きましたが、ぼくの生まれた町は工場ばかりで、周りの人はみんな職人でした。うちの父なども普段は酒ばかり飲んでどうしようもない感じで、別段なんかすごい職人だったという訳でもない*1と思うんですが、しかし製作に入った途端すごい形相になって、怖いというか完全にキメてる顔になってました。今思えばああいうのは鬼の面であって、日常の表情ではなく、神楽や原始的な巫女舞などでつける面と同じものではないか、というような気がします。*2田楽などで面をつけるのも神懸かりの為に着けるのであって、「誰でもない誰か」という状態へ自他共に導入しやすくするための媒体でしょう。
制作や、何かに打ち込むとき、逆に言えば面をつけなければ全うできないかもしれません。夢があって、それをしたいという人は面をつけなければ叶わないでしょうし、カッコつけてたり人目を気にしたりしていてはいつまでも「誰でもない誰か」は中から出てきません。田楽の踊りは面をつける前から身に染み付いている動きで、それこそが鬼の正体だと思います。最近覚えたハヤリの何かや、人にいわれた何かではなく、自分が深く身に刻み込んだ技術と心だけが、鬼として非常な動きをするのだと思います。あると思います(天津木村)
だからー売れるとかーおしゃれじゃないとかーそんなことは気にせずにーやりたいことをやればいいんだよー。
えーと明日は鬼仕込み。

*1:たまにすごいと思います一応

*2:能というのは比べれば多分に芸能であるのではと思います。